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《残月剣④》第五回

幻妙斎も、それが分かっているから、千鳥屋で細かな注文はつけなかったのだ。ただ、左馬介が編み出した新技を盤石のものとせよ…という内容を云ったに過ぎない。

 小部屋で行灯に火を入れ、その灯りを頼りに、懐紙を小机に広げて筆を取る。その筆は、かつて一馬か左馬介が貰った舶来の一品である。矢立ては兄の市之進が道場へ入門する前に持たせてく

れたものだ。矢立てを見、この筆を握ると、兄や一馬が力を与えていてくれるような気がする左馬介であった。机に向かい、脳裡に座した自分を思い浮かべ、更には、その自分を空中から見て想う。計略づくで身を(かわ)すことなどは出来ないが、或る程度は場合別けて考えることが出来る。その為に紙に書き留める腹なのだ。静かに(まなこ)を閉じて自らを解脱すれば、脳裡に浮かぶのは面防具を着けて座す(おれ)自身である。そして辺りはと見れば、長谷川と鴨下が周りを取り囲むように静かに円周を回っているのだ。その円の径は凡そ三間(げん)、即ち、左馬介から各々が一間半ばかりの距離で回っている寸法である。当然、左馬介の脳裡に浮かべた下に見える自分の右脇の床板には、竹刀が置かれている。その自分は胡坐をかいた両膝の上へ手を乗せ、二人を待ち構えているという寸法なのだ。

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