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《残月剣④》第三回

「いや、用向きというのではないのです。先生にひと目と思うた迄です…」

 左馬介は、すんなりと要点を語った。

「先生? 先生が千鳥屋に逗留されておられると云うのか? 何ゆえ、先生が千鳥屋におられるのだ。どうも俺には合点がいかぬ」

「話せば長くなりますので、故あって…とだけ、今は申し上げることにしましょう。委細は改めて、少しずつお話しさせて戴きます」

左馬介は角が立たぬよう、下手に出た。長谷川も、左馬介にそう云われては二の句が継げず引き下がるしかない。故あって、と 庭で、晩秋を告げる枯れ落ち葉が、時折り、かさこそと風に流れるのが見えた。季節は既に冬に向けて真っしぐらで、日没の早まったことが、更にその到来を間近に感じさせる。午後の稽古を

終える刻限も、酉の上刻から申の下刻に変わっている。今では叩かれることもなくなった魚板が、土埃を浴びて、寂しく風に揺れていた。左馬介は廊下を歩きながら、ふと、大男の神代伊織が早朝に叩いていた姿を思い浮かべた。入門の頃、物音に興味が湧き、何げなく覗いたのだ。大勢の門弟で咽返っていた道場が、今では自分を含めても三人なのである。それは誠に寂しい限りなのだが、幻妙斎が新入りを採用しない以上、仕方がなかった。

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