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《入門》第二十六回

 蟹谷を筆頭に、樋口を除く門弟七名が堂所へとドカドカ入ってきたのは、それから四半時ほどしてからである。門弟達は、軽い雑談を笑顔で交わしている。先程迄の凄まじい稽古を物語るかのように、水で洗い拭われた身体から、湯気が立ち昇っている。それが、戸口より射し込む陽の光彩に浮き上がって鮮明である。門弟達が席に着く迄の動態ではそうではなかったものが、座って静態となると、(あたか)も仏達の光背の如く背後から昇っているのである。一馬に肩を叩かれる迄、左馬介は暫し、その初めて眼にする異様な光景を茫然と眺めていた。

「さあ、私達も食べましょう。昼は握り飯と沢庵の準備だけですから簡単に済みますし、夕餉は昨日、観て戴いた通りですから、焼き魚が出ない限り、そう大変でもないのです…」

 と云いながら、一馬は左馬介の肩を軽く押し、堂所の方へと導いた。夕餉と違い各自で飯は装うから、装う気遣いはいらない。

 門弟達の食いっぷりは凄い。一馬と左馬介が下座へ着き、食べ始めた頃には、既に半ば程は、やっつけていた。よく考えれば、それもその筈で、半時ほどは猛稽古をした後なのだ。腹が空いていない訳がない。この場にも、稽古の掛け声のような熱気が溢れていた。

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