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《残月剣③》第二十九回

 幻妙斎は、暗に部屋内へ入れ、と云っている。それは左馬介にとっては、真に畏れ多いことであった。だからといって無碍に断るのでは角が立つ。師と仰ぐお方だから、左馬介としてはそれも恐縮してしまうから、云われるまま幻妙斎が滞在する部屋へ、後ろに従って付いていった。

 部屋へ通ると、部屋内は布団などは見当たらず、病に臥していた痕跡など皆無であった。瞬間、樋口の顔が左馬介の脳裡に浮かんだ。いい加減にしてくれよ…と、左馬介は樋口に文句を云いたい心境になっていた。だが、その前に、何ゆえに師の情報を流したのか…、その辺りの経緯(いきさつ)を知りたい心境の左馬介であった。

 どちらからも話すことなく、束の間の時が流れた。左馬介としては、幻妙斎の体調が気掛かりなのだから、そのことを直ぐ訊けばいいのだが、妙なもので、なかなか切り出せないのだ。そこへ、番頭が菓子鉢と茶を運び、部屋内は少し緩まった雰囲気となった。

「何か、入り用のものがありましたら、お云いつけ下さいまし。お運び致しますので…」

「いつも通りでよい。…そうそう、一つあったわ。鰻政の特上を運んでくれんかのう」

 左馬介は、先生も長谷川流かと、少し笑えた。

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