表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
530/612

《残月剣③》第二十回

ただ、十、二十度と申し合いを重ねれば、いくら不出来の鴨下でも一度は打ち込んでこようから、果して二人の竹刀を受けきれるかは未知数であった。だが、取り敢えずは続けるしか手立てはないと、左馬介は心の冷静さを保とうとした。その後、三、四度と繰り返される打ち込みと受けは、全てが長谷川と左馬介によるもので、鴨下は打ち込まない。というより、打ち込めないのが真意なのである。『気軽に打ち込んで戴いて構いませんよ…』と、左馬介に云われたのだが、どうも気軽に打ち込めない鴨下であった。この男、どうも武芸者には不向きだ…と、長谷川が語る迄もなく、何ゆえ堀川へ入門したのか? とまで誰もが疑える不出来な腕なのであった。それも、入門してから一年は経過してのことなのだから、完璧に駄目にのである。ところが、鷹揚な性格の鴨下は、そうと迄は考えていなかったし、深刻にも受け止めていなかった。或る意味、それが長谷川と左馬介にとって救いといえば救いだ、と云えた。

 十度目の申し合いが終った頃、鴨下に少し動きが生じてきた。ほんの僅かだが、打ち込む()振りを見せたのである。左馬介には微かな音で、その動きが察知出来る。だが、未だ積極的に打ち込もう…という動きではなかった。それは、微細な足運びの感覚で判断し得る。長谷川が打ち込む前の瞬間の動きとは、明らかに違う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ