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《残月剣③》第十九回

 その鴨下は、長谷川に云われたことで長谷川の真似をやめ、自らの判断で打ち込もうとしていた。それは或る意味、左馬介にとっては脅威なのだが、残月剣を完璧なものとする受けとしては理想的な対峙であり、正にこれ以上の稽古はなかった。

 二人は、ぐるりと左馬介の周囲を回る。最初の打ち込みをしたのは、やはり手慣れた長谷川であった。無論、左馬介も素早く察知して、竹刀を取りつつ身を前へ一回転して(かわ)した。鴨下もその光景は片隅から前回、見ていたのだが、やはり流石だ…と感心した。そんな心境では左馬介の相手になる筈もない。左馬介が一回転して立ち上がり、構える迄の空白の時が出来たその隙を突いて一太刀浴びせるぐらいでなければ、相手として価値がないのだ。鴨下は、ただ茫然と左馬介が中段に構える姿を見ているだけだった。要は、刺客的なギラついた逼迫感を欠いていた。決して、それが悪いというのではない。飽く迄も実戦態勢で臨む今の左馬介の稽古には適さない…という、ただそれだけのことである。それに、鴨下がいなければ、昨日迄の稽古と何ら変わらず、意味がない。そんなことで、左馬介としては、鴨下の腕や胸の内はどうでもいいことだった。鴨下が長谷川の後を追って左馬介に打ち込まなかったこともあり、最初に長谷川が放った一太刀は、昨日迄と変わりなく受けられた。

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