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《残月剣③》第七回

そして額に出た玉の汗を稽古着の袖で拭った。その時、気が利いたことに、いつの間に稽古場を抜けたのか、鴨下が白湯(さゆ)が入った茶碗を盆に乗せて入ってきた。

「まあ、ご両人。一杯、お飲み下さい!」

「おお…鴨葱。さすがに気が利く。感心感心!」

「どうも、有難うございます」

 二人は、各々の云い回しで礼を云った。いつも思わない甘露の喉越しは、やはり汗を掻いた所為だろうか…と、左馬介には思えた。

「やれやれ…潤ったぞ」

 誰に云うではなく、長谷川がボソッと吐いて、飲み干した茶碗を盆へ置いた。左馬介は未だ半分方、残っている。よくもまあ、熱い白湯を一気に飲み干せたものだ、と左馬介は考える。余程、喉が渇いていたのだろうか…と考えは膨らんだ。そんなことは、今はどうでもいい雑念だと気づいて、先入観を捨てねば…と左馬介は反省した。剣は兎も角、これでは心が雑念に惑わされているようで、宜しくない。それで左馬介は、湧き起こった雑念を拭い去ろうと思ったのである。瞬時に集中でき、技も冴える左馬介だが、心の鍛錬は未だ道半ばに思えた。飽く迄もそういう想いを抱くのは左馬介一人であり、鴨下や長谷川には左馬介の胸中が分かる筈もない。

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