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《残月剣③》第四回
「そうか? …そこまでお前が云うんなら、続けても構わんが…。 しかし、俺が返されるのは目に見えておるがなあ…」
まだ、渋々の長谷川である。
「別に試合じゃないんですから…。長谷川さんが私と勝負をする訳ではありませんし…」
「…、それはまあ、そうだが…」
少しずつだが、左馬介が押していた。その時、離れた片隅で眺めていた鴨下が大声を出した。
「続けて下さい!! 私も参考になります!」
二人は、思わず鴨下の方を見た。
「お前の参考には、ならんと思うがな」
長谷川は、そう云うと大笑いした。左馬介も釣られて笑った。左馬介も釣られて笑った。そして、云った当人の鴨下も続けて笑った。
「お前が笑うのは怪しいだろうが…。面白い奴だ」
左馬介は鴨下の人柄を充分に知っているから、長谷川ほどは気にならない。
「鴨下さんの仰せの通りです。お願いします」
「そうだな…。では、そうするか」
漸く長谷川も応諾し、左馬介は、ふたたび床へと座した。




