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《残月剣③》第二回

相手が並の者なら、それでも勝機はあるだろう。しかし、左馬介は堀川一の遣い手であり、免許皆伝を仮允許された、云わば屈指の剣士なのである。そのような者に幾ら有利だからとはいえ打ち掛かるのは暴挙と云わざるを得ない。だから長谷川は打ち込まなかったのだ。決して臆した訳ではなかった。一方、受け身の左馬介は、竹刀を左横の床に置き、相も変わらず、いつでも打ち返せる体勢で両眼を閉ざして座していた。やがて、四半時も二人の対峙が続いた頃、ついに長谷川の竹刀が唸った。だが、それと時を同じくして、左馬介の身も瞬発の動きを見せていた。動作の速度を遅らせたとすれば、各々の剣と身体の動きは説明がつくやに思えたが、実際は、ほんの一瞬の出来事であって、描かれた二人の軌跡を現実に説明するのは容易ではない。まして、遠目で眺める鴨下には到底、語れない動きであった。まず、長谷川が、竹刀を置かない左馬介の右後方から突きを入れた。刹那、左馬介の身体は空を飛び、左下に置かれた竹刀を握りつつ、素早い前転で動いていた。長谷川の突きが有効とならなかったのは、やはり左馬介の前転の方が僅かに早かった為である。左馬介は身体を一回転して即座に立つと、竹刀を構えたこうなっては、五分と五分である。以後は、残月剣の(かた)を示そうと、左馬介の勝ち目は目に見えていた。

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