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《残月剣②》第二十八回

無論、木枠に縦木が並んでいるという単純な景観などではない。 というは、ほぼ一間ばかりの高さからは笹の枝葉で覆われ、その後方は見えないに等しいからである。橙色の月が地平線から昇る景色は、いわば一間ばかりの高さでのみ眺められる光景なのであって、木枠に縦木が並んでいると云える光景だった。そして、いつもの形稽古が始まった。腕の振りは冴えを見せ、一通り残月剣の形を描き終えた時、左馬介はそれ迄にはない手応えを感じ取っていた。手応えのまず第一は、最後に袈裟懸けで村雨丸を振り下ろした後、寸分の息の乱れもなかった点である。その二として、(かた)の途中の崩れ上段の構えから一回転して袈裟に振り下ろす所作の俊敏さが増したことを、自らが実感できた点であった。それは(かいな)鍛えにより、太刀が軽く扱えるようになったことを意味した。云う迄もなく、手にしている村雨丸の重さが変わる筈もないのだから、左馬介の両腕の筋力が強まったと考える以外にはないのだ。眼には見えぬ、いわば無形の力が左馬介に備わったと云える。無論それは、石縄曳きの鍛錬ぬきでは備わらぬ力であった。そして結果は、安定した残月剣の形が、ほぼ達成出来たと思えた。後に残された問題があるとすれば、それは如何なる状況で襲われたとしても技を容易く出せるか…という点であった。

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