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《残月剣②》第二十六回

 夢の中の左馬介は幻妙斎が籠る妙義山の洞窟内にいた。しかも、いつかやったことがある岩から飛び下りる霞飛びの基本技をやっているのだった。幻妙斎は、あの時と同じように、遥か上の岩棚に座していて、左馬介には後ろ姿をみせるのみであった。その姿は、すぐに霞んで、左馬介は目覚めた。ほんの僅かな束の間に見た夢だったが、左馬介は何故、そのような夢を見たのか、が皆目、分からなかった。幻妙斎の身に何か異変が起こる前兆なのだろうか。左馬介は妙にそんな夢を見たことが心に(わだかま)った。樋口が現れないのは寂しいが、幻妙斎が息災だということに他ならないから、それはそれでいい、と思える。左馬介は起き上がると道場の裏手へ急いだ。石縄などは盗られる心配がないから、放っておいても特段、構わない。手指の痛みも最初に曳き始めた日よりは随分、増しになっていた。あとは(かいな)鍛えを継続するのみである。気候も暑からず寒からずの秋の日和だから丁度いい。しかし、流石に曳いた後の夜稽古は身体に(こた)え、左馬介は夜稽古を三日に一度とした。無論、石縄を曳いて(かいな)を鍛える試練は連日である。


 曳き始めて十日が過ぎ、そして半月が巡った。季節は秋一色となり、妙義山の紅葉も(ふもと)へと広がりを見せようとしていた。左馬介はこの頃、少し残月剣の技の切れを感じ始めていた。

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