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《残月剣②》第二十五回

「手先を傷めるとはな。いったい何をしておったのか、さっぱり分からんが、まあ、大事なければ、それでよいがのう」

 長谷川は知りたい存念を、ひた隠して引いた。

「はい。お心配り、(かたじけ)のう存じます」

 左馬介は、ひとまず、ほっとした。他人行儀ではあるが、事の次第は残月剣の(かた)が本身で完璧に描けるようになってから話せばいいことなのだ。今は(かいな)の鍛えと形稽古に全てを傾倒すべき時だ…と、左馬介には思えた。二人にも薄々、その辺りの事情が分かっていると見え、余り深くは訊かず堂所を出ていった。左馬介は厨房へ箱膳を運び、食器を洗って水屋へ収納すると小部屋へ一端、戻った。四半時ほどは(くつろ)げるが、その後は試練の石縄曳きが待っている。両手指に(さらし)を巻き終えた左馬介は、暫し仰臥の姿で畳上に大の字を書いて目を(つむ)った。

 左馬介は、いつしか夢うつつに微睡(まどろ)んで、幻覚か現実かが分からない世界へ流されていった。確かに疲れている、ということもあったが、手指の痛みで睡眠を妨げられたという隠れた事情も影を落としているようであった。それに加え、今は規律である師範代による叱責もなく、呼び起される心配もないのだ。蟹谷や井上の頃には考えられないことであった。

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