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《残月剣②》第二十三回

このような小事で二人にいらぬ心配をかけるからというよりは、逆にいらぬお節介をかけられることが左馬介には危惧されたからであった。お節介を受けるのは、返って迷惑ともなる。妙義山の折りとは少し事情が違うのだ。そんなことで、何を語るということなく黙々と朝餉を進める左馬介であった。以前にもそういったことは度々あったから、二人とも奇妙だとは思わなかった。しかし数日が経ち、ひょんなことから左馬介の手の傷は露呈した。普通ならば、剣の道を志して稽古に励む者達の手に竹刀胼胝(だこ)が出来るのは必然なのである。当然、その者達の手の皮は厚みを増している。だから、その部分が破れるほど水脹(ぶく)れするということ自体、まず有り得ない。勿論、その中に左馬介も含まれる。となれば、竹刀以外の物を握るか曳くかしない限り、傷までには至らない訳だ。事実、左馬介の傷も竹刀胼胝以外の箇所であった。自分の箱膳を片づけようと両の手に持った時、左馬介の左手に一瞬、激痛が走り、動きが途絶えた。利き腕の右手は流石にそうはならなかったが、その左馬介を長谷川、鴨下の二人が同時に見た。左馬介は気づかれまいと左手先を(かば)おうとはせずに耐えたが、顔の表情まで隠すことは出来なかった。左馬介にしては不覚であった。

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