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《残月剣②》第二十一回

 長谷川も、相手が左馬介ならば前向きの稽古に励んだのだろうが、今一つ覇気がなかった。

 その夜半、左馬介は川縁(べり)にいた。既に仲秋の名月が東の地平線から昇っている。道場の裏手に流れる川を挟んで、小さな竹林が細々とひろがっているが、その後方は平坦な田畑が続くのみで、山らしい山は全くなかった。丁度、妙義山の山並みとは正反対の方向に当たる。鬱蒼とはしていない竹林だから、月明かりは竹と竹の間を通してはっきりと見えた。というか、日中でも後方の田畑などは地平線まで鮮明に見えるのだ。しかし、夜半の今は、やはり煌々と照らす月明かりがなければ(やぶ)向うは見えず、新月ならば漆黒の闇と化す。仲秋の名月は欠けることを知らず、竹林を通して左馬介がいる川を挟んだ対岸へ蒼白い光を放っている。川の流れだけはそんなことは知らぬげに静穏である。朝、昼の(かいな)鍛えの筋肉疲労が、はっきりと両腕にきている。とはいっても、冷水で湿布したお蔭で少し痺れや痛みは消え、今は僅かに、けだるい程の左馬介の腕だった。昨夜と今宵では、体調が全く違う。左馬介は左腰に差した村雨丸を緩やかに(さや)から引き抜いた。不思議とは正にこのことであろうか。昨夜は、あれほど重く感じた村雨丸が、そうは感じないのだ。

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