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《残月剣②》第二十回

ただ、今日のような(かいな)の痺れや疲労による痛みは計算できないものであり、その辺りを考慮に入れれば、場合によってその場その場の判断を余儀なくされるだろう…とは思えた。首筋の汗を拭いながら、どっぺりと草叢(むら)に腰を下ろして大の字になる。手の平の痺れは感覚を失する程で、所々が蒼じんで変色している。尋常とは思えず、両手を互いに幾度も揉み(こす)って感覚を戻そうと左馬介は努めた。暫くすると、漸く手先の感覚は熱を帯び、むず痒くなってきた。血の巡りがよくなった所為(せい)か…と思えた。

 道場へ戻り、廊下を進むと、長谷川、鴨下が稽古の真っ最中であった。無論、元立ちは長谷川で、鴨下は無心に打ち掛かっては散々に返されるといった塩梅(あんばい)の光景が展開していた。声をかけるのも(はばか)られ、左馬介稽古場へ進まず迂回すると、堂所の裏口から井戸へと回った。

 鴨下のいつもの(まと)を得ぬ掛け声が響いてくるが、なんとも弱々しく精悍さは全くない。それは今、始まったことでもなく、師範代の長谷川も無駄を悟ってか。どうのこうのと叱責はしない。だが、無駄とは分かっていても他に相手もおらず、無碍(むげ)に相手をしないという訳にもいかないから、嫌な顔をすることなく相手を務めているといった状況であった。

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