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《残月剣②》第十九回

一つづつ両手で持って運び、それを昨夜、小屋から持ち出した(わら)縄に結えて全てが整った。左馬介は両の手指に縄をひと回し巻きつけて持つと、小刻みに歩み始めた。全ての石の重みが手指に掛かる。そして、曳き摺る石の負荷が(もろ)(かいな)と肩にきた。手指の痺れを忍び、掛かる負荷に耐えつつ一歩、そしてまた一歩と前へ進む左馬介であった。幾らか汗ばむ肌に秋風が心地いい。出来得る限り進み、佇んではまた進んだ。長谷川や鴨下は事情が分かっているから、取り立てて何も語ろうとはしなかった。左馬介が玄関を下りようとした時も、知らぬげに通り過ぎて稽古場へと姿を消した。こうした心遣いを左馬介は有難いと思う。妙義山へ通っていた折りも、そうだった。何かにつけて相談に乗ってくれた二人である。左馬介には自惚(うぬぼ)れる気持など毛頭なかったが、やはり人の子である。自分では知らぬ内に、何気なく高慢な態度を取っているかも知れないのだ。左馬介は二人に対する時、幾ら腕を上げても感謝の念を忘れまい…と、堅く誓うのだった。

 四半時も曳き続けて、左馬介の両腕(かいな)はすっかり棒になっていた。左馬介は深い溜息を一つ吐き、今日はこれ迄にするか…と諦めた。朝昼の稽古は両の(かいな)を鍛えることに費し、形稽古は夜半に回そう、と左馬介は考えていた。

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