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《残月剣②》第十一回

 夜風にもすっかり秋の気配が色濃く漂っている。それに、暮れ(なずんでいた陽が西山の一角へ没する時刻も、随分と早まったように左馬介には感じられた。夕餉を食べ終えて片付けが済む頃には、もうとっぷりと漆黒の闇が(おとな)っているのだった。 

 毎年のことだと云えばそれ迄だが、今年の秋は例年とはどこか違った。野分が来襲したこともその一だが、何か不吉な凶事が続いていた。瓦鳶の篠屋による土塀瓦の修繕も済み、割れた木戸も新調された。請け負った大工の又五郎は鰻政の主人、政次郎(まさじろう)の末弟で、鰻政の近くの長屋に住まいしていた。大工だけの稼ぎでは食っていけないという事情もあり、鰻裂きの手間仕事を鰻政から貰っていた。どちらかといえば、鰻裂きの手間仕事の方が一年を通すと大工の手間仕事より身入りが多かった。鰻政は師範代の長谷川が鰻好きということもあり懇意にしているのだが、そうした(つて)もあり、木戸仕事を頼むことになったとも云える。今朝は、その又五郎が手間賃を取りに早速、道場へ寄っている。

「手間は三百がとこで、ようございます。総じて、一貫文も頂戴すれば…。材も高値が続いてますもんで…」

 方便の付け値か誠の付け値かは別として、一貫文を道場から、せしめようという又五郎の腹である。

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