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《残月剣②》第九回

 道場の裏手を流れる川縁(べり)には、もう(すすき)の白い花穂が風に吹かれて(そよ)いでいた。左馬介は小部屋に隠した錦袋に入った村雨丸を取り出すと、それを手にして川縁へと早足で出た。川の対岸は鬱蒼と繁る一面の竹林で、人の気配などは全くしない。左馬介は、袋から(おもむろ)に村雨丸を取り出すと腰に差し、静かに(さや)から本身を引き抜いた。そうなのだ。左馬介が急に稽古場を出たのは、真剣で(かた)を描こうと思ったからである。その真意は、竹刀では軽過ぎ、実戦には、そぐわない…と思えたからだった。流石、真剣は竹刀の比ではない重さがある。(かた)はどちらも同じように描けるが、手にする重みの感覚が異なり、思うように滑らかな形が描けないのだ。そればかりか、迅速な(さば)きも(こな)せなかった。ずっしりとした重みを手指に感じつつ、左馬介は中段に構える。やはり本身は竹刀の比ではない。最初から本身で形をすべきだったのだ…と、左馬介は省みた。ぎこちないものの、それでも上段から崩し上段、崩し上段から袈裟掛けへと斬り下ろし、一通りの形を描ききった。自ら予想出来たことだが、必然として竹刀のような素早い捌きは出来なかった。さもあろう…と、その辺りは左馬介にも得心がいく。これ以降は本身で稽古をせねば、と左馬介は思った。

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