表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
484/612

《残月剣②》第七回

残月剣に係る事情は薄々、二人とも知っているから、何も云わなかった。

 昼餉の握り飯を食べ終えて、残った沢庵で茶を啜る。その、なんと美味いことよ…と、左馬介だけではなく長谷川や鴨下も、そう思うのである。多人数の賄いの時分は週一ぐらいで、残りの日は白湯(さゆ)で我慢していたから、この三人になった今は非常に有難く思えた。客人は塚田、長沼、それに山上の三人と影番の樋口を含み四人だから、月に四朱、即ち一分の銭が師範代の長谷川の懐に入る。だから、茶代には事欠かず、時に触れ、鰻政の特上も頂戴出来るという寸法だった。しかしその反面、あの美味かった茶粥が食えなくなってしまったのだ。よいことがあれば、その反面、悪いことも当然、起こるのである。特に鴨下には、その辺りが(こた)えた。鰻重があるから文句はなかろうと左馬介は思うのだが、鴨下に云わせれば、どちらも食いたいということらしい。左馬介はそれを直接、聞くにつけ、鴨下の食い意地の凄さに改めて驚かされる思いがした。時折り、長谷川はそうした鴨下の卑しさを(たしな)めるのだが、いっこうに治りそうになかった。これだけは生まれ持ったものだから仕方がない…と、今では、すっかり諦めている長谷川であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ