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《残月剣②》第二回

その話の声が聞こえてくる。左馬介が(かた)を描き始めた時、はたと声が止まった。声に心を削がれてはならないと、左馬介は形を描き終えると竹刀を一端、止め、大きな息を一つ吐いた。未だ心域に多少の乱れが生じている。それが自ずと分かる左馬介であった。人の五感は、得てして雑念を起こさせる。それが今の左馬介には云えた。瓦の挿し替えに要する人数など、どうでもいいのだが、人は全くの無という存在には成り得ないのか…。その辺りが修行の深さと密接に連なり、隙のあり、なしとして具現するのだろうか…と、左馬介には思える。

 篠屋は、どうも二人の職人らしい。耳栓をしていないから自ずと聞こえてくるのだが、これは返す返すも致し方ない。そう思い直して、ふたたび竹刀を中段に構える。そして少しずつ上段へと移動する。次に左手を放し、親指と人差し指の間に竹刀を乗せる。これが真剣ならば、刃を上方向にし、峰を下方向にして親指と人差し指の間に乗せねばならない。そこが竹刀と真剣との違いなのだ。今は隙が生じぬように形を固めているのだから、それはいいと左馬介は思っている。無論、必要なのだが、次の段階の稽古手順なのだ。乗せた竹刀を万歳をする如き姿勢に開く。即ち、(つか)を握った右手を水平に右へ、そして両指の間に竹刀を乗せた左手を水平に左へと広げていく。

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