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《残月剣①》第二十九回

「…なんだ。これしきのことで俺を叩き起こす程のことはなかろうが …」

 そう不満げに云うと、またひとつ大欠伸をうつ長谷川であった。実際の外の様子は、益々、暴風雨が猛り狂っているのである。それにも拘らず、おっとり刀の長谷川なのである。肝が図太いというのか、或る種、少し感性が鈍いとも悪く云えるのだ。まるで鴨下と長谷川の動きは、対照をなす動と静なのだった。勿論、三人とも、この野分という自然の猛威を如何ようにも出来ない…とは分かっていた。幸いにも、道場の裏手を流れる川は氾濫して堤防が決壊するほどの大川ではなく、水嵩(かさ)は増え、流れも早まってはいたが、全くそうした心配は不要であった。そのことも三人は知っている。

 それから(ふた)時ばかりが流れた。左馬介だけではなく、皆、少し眠くなってきた。それは暴風雨の衰えとともに加速していった。鴨下は既に、ウツラウツラ…と首を縦に振っている。長谷川も、ふたたび欠伸を始めた。左馬介だけは修行の(あか)しか、かろうじて眠気を堪え忍べるが、それでも限界は近づきつつあった。暴風雨も幸いなことに普通よりは激しい程度に弱まってきたので、左馬介は小部屋へと引き揚げることにした。これ以上、戸板を睨んでいても無意味だと思えたのである。左馬介は立ち上がった。

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