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《残月剣①》第二十八回

過去に災害を蒙った苦い記憶があれば、今回もそうなるかも知れない…という恐怖の呪縛から逃れることが出来ないだろう。故に、知らない左馬介にとっては、返って好都合なのであった。その点、同じように過去を知らない鴨下だが、小心と心配性の性格が災いして、左馬介とはまた一味、違った発想となっていた。一味違うといっても、それが悪い意味を指すのは当然である。叩きつける雨が戸板を震わせて勢いを増す。それと比例するかのように、鴨下も秋小口だというのに震えだした。

「では…」

 そう云うと、鴨下は長谷川を起こしに小部屋の方へ去った。風雨は相変わらず横殴りで、物の飛ぶ音が時折り暴風雨の騒音に混ざって左馬介の耳に聞こえてくる。だが、自然の猛威は、いくら左馬介の剣をもってしても容易に食い止めることは出来ないのだ。ただ平静が戻る迄、じっと我慢する以外に(すべ)はなく、万が一、不測の事態が起こった場合には、全力で道場を守らねばならないのである。別棟の客人身分の者達も全員、起き出したようだ。それは、いつもなら聞こえない大声が響いて届くから左馬介には分かる。

 暫くして鴨下が戻ってきた。その後方には気乗りせぬ態の長谷川が眠そうな欠伸をして歩いてくる。

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