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《残月剣①》第十七回

厨房で持ち帰った(ほしい)を元の袋へ戻すと、堂所から廊下越しに自分の小部屋へと入った。玄関から入れば、稽古場前の廊下は必然的に通らないと自分の部屋へは行けないのだが、抜け戸は裏口ではないものの或る種、そんな趣もあった。

 左馬介は手にした村雨丸を、どこへ置こうか…と思案した挙句、布団を収納する押し入れへ隠すことにした。だが、そこも湿気るような気がして、机の裏手へ、とりあえず置いた。これも、よく考えれば、隠す必要など毛頭ないのだ。二人には堂々と披歴すれば事は足りるのだが、自慢たらしくも思え、今一つ左馬介の気分が乗らなかったのである。だが、隠し続けたとしても手入れを怠り、錆びつかせることは出来ない。大小二刀とともに、この村雨丸も打ち粉で拭ったりせねばならないのだ。左馬介は机の裏手へ一端、置いた袋をふたたび手にし、村雨丸が入った錦織袋の紐を解いた。そして徐に、袋より村雨丸を取り出し引き抜いた。そのなんと眩く見事なことか…。光り輝く刀身に、左馬介は暫し唖然として見蕩(みと)れていた。

 それから十日ばかりの日が流れた。左馬介は何事もなかったかのように鴨下や長谷川と稽古に汗していた。幸いにも二人は妙義山でのことを深く訊きはしなかったので、そのままそのことは忘れ去られたような塩梅(あんばい)だった。

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