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《残月剣①》第十六回

「以後の沙汰は樋口に伝える故、奴から聞くがよい。後は当面、今の技を磨くことを怠るな…」

 下へと降りた左馬介に、岩棚から降り注ぐ声があった。左馬介は、ふたたび、「ははっ!」と、(ひざまず)いて平伏すると、そのまま立ち上がり、まっしぐらに洞の出口を目指した。

 洞窟を抜け出た時、ふと、右手にした錦織の袋が気になった。村雨丸と幻妙斎が云ったその刀は、左馬介の右手に頃よい重みの手応えを与えていた。思わず袋の紐を解き、刀を見たい衝動に駆られはしたが、敢えてそうすることなく山道を下り、道場へ急ぐ左馬介であった。

 刻限は未だ昼にはなっていない。洞窟の内は夏場でも冷気で凌ぎよかったが、山道を半ば下りる頃には全身が汗ばみ、(ひたい)から汗が吹き出てきた。袋に入った村雨丸だけは汗で汚すまじ…と、左馬介は手の汗を(はかま)で拭きつつ下りていった。(ほしい)の必要もなかったか…と、昼前のぎらつく陽射しを浴びながら左馬介は思った。道場では鴨下と長谷川が稽古の真っ最中で、左馬介が帰ったことなどは全く知らぬげであった。それもその筈で、左馬介は汗ばんだ身体を井戸水で拭うと、そのまま稽古場を通らない抜け戸から入り、厨房へと回ったからである。

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