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《残月剣①》第十三回

「ははっ! …それでは、未熟ながら…我が名付けし残月剣の一太刀、とくと御検分あれいっ!」

 そう力強く告げると幻妙斎に対し深々と一礼し、左馬介は棒立ちの無となり、静かに両の瞼を閉ざした。暫くの空虚な間合いが流れた後、左馬介は左腰に差した大刀の(つか)おもむろ)に右手を近づけて摑むと、ゆっくりと(やいば)(さや)より引き抜いた。中段へと構えられた刃は一端、動きを止める。幻妙斎は岩棚の上より、その様子をつぶさに観る。やがて、閉ざされた左馬介の両眼が静かに開かれた。次の瞬間、左馬介の大刀は次第に上段へと動き出し、上段の形に構えられた。しかし刃はそれで止まらず、静かに柄から離れた左手は、親指と人差し指の間で開かれ、刃の(むね)を乗せた。更に、静かな運びで(つば)より切っ先めがけて左手は動いていく。丁度、大刀は肩に対して平行となり、(あたか)も大刀を頭上に掲げて万歳をした形である。換言すれば、両手を頭上で刀掛けにした形でもある。(かた)は既に出来て後、幾度も左馬介によって磨かれ、精度を高めていた。精度が高まるとは、確固たる形となり、ぶれなくなったということである。その万歳した姿で動きが暫し止まった次の一瞬、右手は大きく動き、刃は虚空で素早く小回転したかと思うと、ふたたび柄を摑んだ左手とともに右上段から左下段の袈裟に斬り下ろされていた。

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