表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
454/612

《残月剣①》第十回

左馬介はどうするか…と思案の挙句、今宵はまず出食わさないだろうから、明日、二人が起き出す前に道場を出ようと心に決めた。よく考えれば、妙義山へ通っていた頃は、そうしていたのだ。別に妙だ…と思われることでもない。

 次の日の早暁、左馬介は厨房で(ほしい)を布袋に少量、入れると、竹筒一本を腰に結んだ。そして背に木椀等の入った軽荷を(たすき)掛けにして身につけると、暗いうちに道場の通用門を出た。時は明け六ツ前である。以前、梅雨時に持参した握り飯は、晩夏とはいえ猛暑の今は流石に足が心配されたから、糒にしたのだ。

 通い慣れた妙義山への道中は、左馬介にとって久々に心浮かれた。新たな技が完成した故であることは申す迄もない。日の出は季節の加減からか以前よりは早かった。妙義山への道中の半ば辺りである。だが、道そのものは変わる筈もなく、いつもの歩みで左馬介は妙義山を目指した。

 (ふもと)へと至り、随所で折れ曲がった山道を登っていく。暫くすると、見慣れた洞窟前へと着いた。やがて去ろうとする晩夏を押し(とど)めるかのように、蝉しぐれが賑やかに左馬介の両耳を捉えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ