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《残月剣①》第五回

 しかし、左馬介がそのことに気づけたのは収穫であった。道場が賑わっていた頃の左馬介ならば、恐らく気づかなかったであろう。智、仁、勇の剣を手にする心得すら当時の左馬介は知らなかったからだ。心得は別に誰から教わった訳でもない。幻妙斎が籠る妙義山での稽古を始めた頃より自ら書物を紐解いて得た知識であった。うたた寝のつもりが、いつの間にか熟睡し、その姿を長谷川に見られたことが、この心の動揺を引き起こした発端である。心の動揺が生じた背景には、左馬介の心理上の油断があったからで、集中さえしていれば別段、どうということもなかったのだ。要は、どのような出来事が生じようと平常心を保ち続けられるか…ということである。剣を握っていない場合でも、心には剣を握っていなければならないことを左馬介は、この時点で悟った。しかも、心の剣を握っている時にも、智、仁、勇の心得を保っている…。これが剣士として堀川の皆伝を允許される者のあるべき姿である…とも悟ったのであった。

「ついうっかり、眠っていたようで、長谷川さんの仰せの通り、まだまだのようです…」

 急に思い出したように云われ、長谷川は思わず飲みかけた白湯(さゆ)を吹き出しそうになった。

「……ん? ああ、先ほどの話か? 驚くではないか、急に…」

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