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《霞飛び②》第二十四回

特に仏法においては下級僧の呼称として、“雲水”とされる文言であった。左馬介は、その文言の意味は理解できた。ただ、その僅か四文字に託して伝えようとした幻妙斎の真意までは測りかねた。雲水のように流浪して新たな剣筋を編みだせ、という意なのか、それとも雲や水のように自然と一体となり剣筋を工夫せよ、との意なのか、はたまた、それ以外の意であるのか…。左馬介には実のところが測りかねたのである。だが、(いず)れにしろ、この“行雲流水”という四文字の書状は、幻妙斎の左馬介に対する鼓舞、激励であることは疑う余地がなかった。左馬介は、手にその書状を握りしめ、幻妙斎が向かったであろう妙義山の遠景を眺めていた。

 それから二十日ばかりが流れた。猛暑の盛夏である。妙義山へ通う必要がなくなった左馬介は、本来の道場稽古に復帰し、長谷川や鴨下と汗しながら新たな剣筋の模索を日々、行っていた。この日も前日の暑気が冷めやらず、辺りを覆う朝であった。左馬介が寝汗を拭こうと井戸端へ向かうと、珍しく早く起き出した鴨下が井戸に吊るした小鍋を上げようとしていた。左馬介は慌てて駆け寄り助勢した。大人数の時の大鍋と違い、三人となった今は、小鍋だから助勢することもないのだが、何故か、そうしていた。

「…お早うございます。随分、早いですね」

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