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《霞飛び②》第二十三回

ただ、毎度のことながら、その位置からどのようにして消えたのか…という素朴な疑問は湧くのである。剣術ではない妖術のような消え方だからだ。無論、霞飛びにしろ、その初歩が漸く出来るようになった左馬介には、とても人間技とは思えないのだが、現実に眼前で見せつけられれば信じぬ訳にはいかないのである。だから、左馬介は幻妙斎という人物を神の如き存在…と、捉えているのだ。

 辺りをぐるりと見渡した後、左馬介は(いおり)を後にしようと足継ぎ石より庭先へと降りた。丁度、その時だった。庭から離れた道場を囲む土塀の上に一匹の猫がいた。獅子童子である。獅子童子は、のっそりと土塀を歩いていたが、一瞬、左馬介を見。と塀向うに飛び降り、その姿を消した。恐らく幻妙斎は、既に道場外へ出たのであろう。左馬介は何気なく数歩、庭を歩いた。その時、俄かに天空よりヒラリヒラリと舞い落ちる一通の書状らしき巻紙が左馬介の前へポトリと落ちた。平静では滅多と驚かない左馬介も、この時ばかりは驚いて、思わず天空を見上げると即座に歩みを止めた。そして、足元へ落ちた書状を腰を(かが)めて手に取った。(おもむろ)に、その巻紙を開くと、そこには墨書された四文字が鮮明に、“行雲流水”と(したた)められていた。行雲流水とは、空に存在する雲と、川を流れる川の如く、執着心を捨てて物に応じ、また、事象に従って行動せよという教えである。

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