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《霞飛び②》第十九回

 五間ばかりに近づき、そっと聞き耳を立てる。だが、物音はもうしない。つい今し方、音がしたのは確かなのだが、それは猫の鳴き声に過ぎない。いや、それさえも不確かで、左馬介にはそう聞こえたのだった。飽く迄もそう聞こえたのであり、きの所為(せい)かも知れないのだ。なおも聞き耳を立てていると、何やら砂利を踏みしめるような微かな音がし始めた。次第にその音は大きさを増す。しかも(いおり)のある方向とは正反対の、左馬介の丁度、背後からである。そして遂に、ピタリとその音は止んだ。その刹那、左馬介の背後から声が飛んできた。

「左馬介さん! どうかされたのですか?」

 左馬介が驚いて振り向くと、十間ばかり離れた所に鰻政から戻った鴨下が立っていた。

「いやあ、どうってことはないんですよ。猫の鳴き声がしたように思いましたもので…」

 左馬介は適当に暈してその場を取り繕った。

「ああ、そうでしたか。獅子童子ですかねえ。いや、ここんとこ、野良も時折り、顔を見せますから、分かりませんがね。それじゃ、私はこれで!」

 それ以上は訊くことなく、鴨下は玄関へと続く石畳を歩き始めた。

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