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《霞飛び②》第十六回
「はい、それはそうなのですが…」
左馬介は幻妙斎から直接ではないにしろ、間接的にそれらしきことは匂わされている。自分がこの先、そう長くは生きられない…といった内容を幻妙斎から告げられ、それ迄に新しい剣技を完成させるように云われた左馬介なのだ。
「ここでの稽古が一人では出来ぬ以上、残された道は他道場へ出向く以外にはならない。が、葛西では、この堀川道場しかない故、それも無理だ。まあ、あったとしても、鴨下も孰れは道場を去る日が来るのだ。五年が経てばな」
「先生は直接、道場を閉ざす、とは申されておりませんが…」
「ははは…、それは、まあなあ。だが、新しい門人を入れられないということは、そういうことだろうが…」
「はい、その通りです。しかし、何かお考えがあってのことかも知れません。私に新しい剣の技を編み出すよう仰せになったぐらいですから」
「なにっ! それは誠か? 何故、そのことを早う云わんのだ」
左馬介は、しまった! と思った。つい、うっかり、口が滑ったのである。
「いや、別に隠すつもりはなかったのですが、つい云いそびれて…」




