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《霞飛び②》第十五回

そんな心境に左馬介は陥っていた。鴨下と長谷川は、左馬介の心中を知らぬげに、空を眺めて呑気に話し合っている。

「それじゃ、返しに行って参ります…」

「おう! (はよ)う戻ってこいよっ」

 なんでも、鰻政の商売上の都合からか、(うつわ)を取りに来れないので…と、小僧が帰り際に鴨下へ懇願したのだという。いつでも取りに来れるではないか…と、一応はつっぱねて鴨下が云い返したそうだが、夏場はとてもそんな余裕はないと、反発を食らったという。要は、繁忙で手間がないということらしい。それで一人頭、五文をさっ引くから、器を届けて貰えまいか…と頼まれ、人のいい鴨下は了解したのだそうだ。それを長谷川から聞くにつけ、左馬介は鴨下の人の良さを改めて認識させられるのだった。

 鴨下が鰻政へ器を返しに出ると、道場内は長谷川と左馬介の二人きりとなった。ガラ~ンとして物音ひとつせず、人熱(いき)れの欠けらもないという殺風景な佇まいが広がる。

「左馬介…、この道場も、あと暫くだな」

「えっ! それは確かなことですか?」

「いやあ、別に今日明日、どうのこうのと云う話ではないが…。あと数年もすれば、鴨下一人になるだろうが…。それはよいが、その鴨下は如何ようにして稽古をするというのだ? 一人では、何も出来まい…」

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