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《霞飛び②》第十四回

鴨下は、どうも剣士というよりか調理人に向いている風であった。

 鍋の近くには三ツ葉の数本が適度に刻まれて小皿に盛られている。念の入ったことに、その前には更に漆椀が置かれていて、至れり尽くせりに準備されている。こういった気配りは鴨下の生まれ持っての性分なのだろう。それが、外見の風貌とは全く異なっている点で、左馬介を笑わさずにはおかなかった。

 椀に汁を装って三ツ葉を入れ、それを持ってふたたび堂所へと戻る。長谷川の横の席へ座り、椀を置くと鰻重の(ふた)を取る。夏場だから、まだ充分に暖かい。雨勢は少し弱まったようで、薄墨色に染まった空の塩梅も、少し薄まったようである。それでも、まだいつもの雨以上には降っていた。

「どうやら、峠は越えたようですね」

「…そうだな」

 鴨下が廊下の方を見て云い、長谷川が朴訥(ぼくとつ)に答えた。

 夕方には、あれほど降っていた雨が止んだ。いつ止もうと左馬介はよかった。明日からの行方(ゆくえ)が全く見えない左馬介である。新しい剣技を編み出す稽古の方法は勿論だが、何処で如何なる技を…など皆目、定まらないのである。定まらぬと云うより見当がつかないと表現した方が(まと)を得ているのかも知れない。

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