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《霞飛び②》第十三回

鴨下は長谷川に云われた手前、雨漏りが多少、気になっていたが、素振りには出さず、ゆったりと堂所へ移動した。長谷川も、その後方に続いた。雨勢が強まったお蔭で、それ迄の暑気は幾らか薄れ、暖かな風の中にも冷気が混ざり心地よい。その風が、開け放たれた戸口より雷鳴とともに入ってくる。雷などを恐れる者は堀川一門には誰一人としてしない。腕で劣る鴨下でさえ、そこまで(きも)は細くなかった。

 堂所で二人が鰻重を半ば食べ終えた頃、左馬介が現れた。

「左馬介さん、厨房に肝吸いが温めてあります。…前と同じ鍋です」

 左馬介は、その言葉を耳にして鴨下へ軽い礼をすると、堂所から厨房へと回った。

「これは夕立と云うよりか、夏の嵐だ…」

 長谷川が笑いながら隣に座る鴨下に話し掛けた声が、左馬介の背に響いた。

 厨房には(へっつい)に乗せられた見慣れた鍋があった。その鍋の(ふた)を取ると、鴨下が云った通り、肝吸いの出汁(だし)が時折り湯気を立てて煮えている。焚き木は上手い具合に消えるでなく、かといって燃えるでもない状態だ。簡単なようで、このように頃合いにしておくというのは或る種の才能とも云えた。

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