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《霞飛び②》第十回

市之進が跡目を継いだ折りの源五郎は、そんな幼少ではなく、もうすっかり青年だった現実からしても明らかに妙だ。あり得ないのだが、夢だから致し方ない。左馬介の目線で夢は進むのだが、左馬介がそれぞれに話しかけても誰も気づくことなく、まるで左馬介が存在しない幽霊か何ぞのように展開するのである。当然、夢なのだから仕方がないのだが、夢の中の左馬介は依怙地になって(わめ)いているのである。自分は、ここにいると訴えるのだが、清志郎、蕗、市之進、源五郎とも、そ知らぬ態なのだ。左馬介は堪らず、源五郎の肩を揺り動かした。指先に感触はあった。ハッ! と驚いた素振りで、それまで気づかなかった源五郎が振り返った。そして訝しげに左馬介を見た。眼と眼が合った。次の瞬間、左馬介は頭から浴びせられる水を感じた。驚いて後方を振り向くと手桶を持った父が立ち、怒った顔で左馬介を見下ろしていた。たぶん何かに怒ってぶっ掛けたのだろう。そこで夢はプッツリと切れ、左馬介は目覚めた。

 両瞼を開けると、空から大粒の雨滴が、左馬介めがけて落ちていた。着物は既に、かなり濡れていた。左馬介は慌てて立ち上がると、急いで道場めがけて走った。雨脚が強まっていた。道場へ入ると、もう雨は本降りに強まって、辺りは雨一色である。

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