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《霞飛び②》第九回

(あたか)もそれは、辺りに敷きつめた真綿の上に降り立ったような感覚なのである。取り分けて左馬介が飛ぼうと意識して飛んだ訳ではない。左馬介は何気なく川縁(べり)へ出ようと近道を選んで飛んだだけなのだ。その結果が衝撃が無だった…即ちそれは、初歩とはいえ、霞飛びは既に左馬介の身についていたことを意味する。そんなことも、今の左馬介はもう意識していなかった。微かに脳裡へ(よぎ)るのは、ただ一つ、新たな剣技を編み出すこと…このことに尽きる。

 夕暮れになると蛍があちらこちらと飛び交う川縁伝いに歩いて、左馬介は土手の草叢(むら)へゆったりと身を沈めた。寝そべり、川面を眺めていると次第に眠気に襲われ、いつしか微睡(まどろ)んでいた。心地よさに、左馬介は深い眠りへと引き込まれていった。そして、夢が現れた。懐かしい故郷の生家であった。母の蕗が忙しく動いて何やら片付けをしている。父の清志郎は盆栽鉢に鋏を入れていた。どういう訳か、商家へ養子に入った筈の兄、源五郎もいて、長兄の市之進と談笑している。今、家族の全員が揃っていることは、ないとは云えないが、如何にも現実的ではない。それに、市之進は既に清志郎の跡目を継いで同心として出仕しているように見えるが、源五郎は未だ子供姿で元服より遥か前の姿である。

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