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《霞飛び②》第五回

 三度目を飛ぶ前、左馬介の脳裡に閃いたのは無心となることである。眼で見えない闇の中では触覚のみが頼りとなる。その時、恐怖心は不思議と消えていた。要は、無心となれば恐怖心が去るということである。幻妙斎に云われるまま木偶(でく)となり、一度目を飛んだ時はどうだったのか…。そうだ! 暗黒の道を歩むうちに、自然と身体に備わった感覚があったのだ。それは決して口に出来るものではない。眼には映らない身体が受けた感性である。左馬介は知らずとも身体はそれを知っているのだ。左馬介が知らず、身体 がそれを知っているとは、左馬介の内心にある潜在意識が知ったということだ。潜在意識は、意識していない時に出現するのである。それは特に、尋常ではない事態に出食わした時に出現することが多いようだ…。左馬介はそこ迄を巡っていた。その後、四度(よたび)五度(ごたび)と飛び重ねるうちに、左馬介は自らの体重を感じなくなっていた。それは着地の瞬間以外でも意識出来た。同様の所作で飛び降りていた一昨日(おととい)には思いもつかない感覚であった。

「音がしなくなったようじゃのう…。漸く、少しは呑み込めたとみえる…」

 黙して座す幻妙斎が、左馬介に背を向けたまま小声で云った。

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