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《霞飛び②》第一回

 洞窟の入口は、いつもと変わりがない。が、一歩、そして一歩と、左馬介が奥へ進む速さは緩慢になる。それも当然で、入口は未だしも外の明るさが背後より前方を照らすが、それも三間(さんげん)ばかり進めば(つい)える故だ。更に進めば、視界は暗黒の闇に包囲され、一歩先すら、ままならなくなる。左馬介は五間ばかり進んだところで一端、立ち止まった。そして、静かに両眼を閉ざし、両腕を左右へと押し出す。洞窟の幅はその狭さ故か、容易に両手先を岩肌へと触れさせる。左馬介は左右の手先の感職触を確かめつつ、一歩前へと歩を進めた。両眼を閉ざしてはいるが、閉ざさなくとも暗さは変わることがない漆黒の闇だ。左馬介は記憶を頼りに足場と手先を確かめながら進んでいった。脳裡に残像を想い描けば、それは両眼を開けた時以上に緻密(ちみつ)に辿れるのだ。暗黒の世界が薄れ、そしてやがては、想い描いた残像によって消え失せる。それは、明々と火の灯った燭台に照らされた洞窟を進む場合と遜色がない。行く手が見えない視覚上の恐怖感も次第に無と化し、左馬介は前へ前へと進むのだった。この恐怖心を無とすることが即ち、幻妙斎が云った霞飛びの妙がこの闇に隠されているということなのか…。そう左馬介には思えていた。

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