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《霞飛び①》第二十七回

ところが、米櫃(こめびつ)生憎(あいにく)(から)であった。他に何か食いものはないかと、左馬介は水屋の中を覗き込んだ。胡瓜が三本、糠漬けにしようと鴨下が用意しておいたのだろう。丁度、上手い具合に左馬介の目に飛び込んだ。空きっ腹は如何ともし難い。いつもの稽古以上に、飛び降りる所作のみに集中した為か、今日の空腹感は尋常ではない。考えるより先に、左馬介は胡瓜の一本を口へと放り込み、噛っていた。普段ならば、このような生臭いものは口に出来ない左馬介だが、今日は勝手に胃の腑へと納まっていく。簡単に二本を体内へ納めたが、いっこうに腹は満たなかった。左馬介は、他にはないか? と、ふたたび水屋の中を探し始めた。すると、片隅に小鉢に入った昨日の煮魚の半切れがあった。これは、いいものが…と、左馬介が思ったとき、上手くいかぬもので、そこへ鴨下が、また現れた。

「なんだ、左馬介さんでしたか…。何か、お探しで?」

「いや、お恥かしいところを…。ちと、腹が減っていたもので…」

 鴨下は苦笑して、

「櫃も空でしたでしょう。今日は、鰻政の鰻を運ばせる手筈ですから…」

 と、顔を和ませて語った。

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