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《霞飛び①》第二十五回

この感覚の違いは、履き換えたから体感し得ることで、草鞋(わらじ)に換えねば気づかない内心の相違だった。

 それから幾度、飛び降りただろうか…。左馬介の足裏の感覚は既に無くなり、痛いとも冷たいとも、更には(かゆ)いとも感ぜず、全ての感覚が全否定される麻痺状態に陥っていた。だが、微妙な感覚が未だに摑めない左馬介であった。幻妙斎が見せた、あの優雅な舞いのような飛び、また獅子童子の安定した枯れ葉にも似た着地は、いったいどうすれば可能なのだろう。それが頭の計算によるものでないとは左馬介にも分かっている。実際に自らが行うことによって身体に刻み込む以外、方法は無いのである。

 もう昼近くになっているのだろう。梅雨空は灰色に覆われ、いっこう変化を見せないでいたが、幸いにも雨粒は落ちてこなかった。そのことが、左馬介にとっては唯一の慰めであった。左馬介は一端、中断することにした。何ともならない時は、引くことによって難関を乗り越えてきた左馬介である。引くとは防御に回る撤退の意ではなく、冷静に再考する時を持つための撤退を指す。今回も、そのような中断であった。

 何事もなかったように道場へと左馬介が戻ると、丁度、鴨下と長谷川も朝の組稽古が終ったとみえて、稽古場から出てきた。

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