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《霞飛び①》第二十三回

左馬介は慌てることもなく念入りに見回って探した。こういう時は落ち着いていた方がいい…との考えは、幻妙斎が説く無心の境地にも、どこか通じるようであった。事実、平穏な心で探していた左馬介の眼前に手頃な高低差がある地形が出現した。道場の裏手には夏場に蛍が飛び交う川が流れている。道場が賑わっていた頃は、ここで夕涼みをし、一馬とともに語らった古い残像が左馬介の胸中に甦った。川へと降りる石畳の道は丁度、左馬介が探していた高低差、約五尺の段差があった。通常の場合は円弧を描いて曲線状に石畳の道を降りるのだが、一気に飛び降りようとすれば出来ぬ高さでもなかった。幻妙斎の洞窟の岩肌と寸分、(たが)わぬという条件ではないが、高低差は、ほぼ似通っている。左馬介は、ここだ! と直感した。まずは一度、飛んでみる。足裏に響く感覚は洞窟の時とは少し違うように思えたが、高さが似通っているから、飛び降りる時点での感覚は、ほぼ同じだった。これはいい所が見つかった…と、左馬介は思った。幸いなことに、ここは道場からは見えない裏手だから、鴨下や長谷川に知られることも、まずない。まあ、知られたとしても別段、構わないのだが、これ以上のいらぬ心配をかけたくない左馬介にとっては好都合であった。

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