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《霞飛び①》第二十一回

「左馬介さん、戻りましょう!」

 鴨下に促され、左馬介は我に帰って立ち上がった。すっかり夜が深まり、辺りの草木は疾うに寝静まっていた。

 左馬介は鴨下と別れて自分の小部屋へ入った。そして(おもむろ)に竹筒の水を一杯飲み、寝布団を敷いていると、ふと悔恨の念が湧き上った。それは、霞飛びの一件を樋口に訊ねなかったことだった。樋口ならば一馬と同じか同じ以上に左馬介が知らない情報を持っているに違いなかったからだった。それに、洞窟での稽古の助言もしてくれるだろうと思えた。そう思いつつ横になって布団に潜ると、疲れもあってか、左馬介は直ぐ睡魔に襲われた。

 早暁の朝稽古は、幻妙斎が籠る洞窟へ通うようになってからというもの、中断されていた。それでも、今迄に(つちか)われた習慣とは恐ろしいもので、必ずと云っていいほど、寅の下刻には一端、目覚めるのだった。そして、ふたたび瞼を閉ざすといった日々が妙義山での修行が始まって以来、左馬介の生活として続いていた。兎も角、それはそれでいい…とは左馬介自身、思っていた。要は、自分の剣筋が、何らかの形で磨かれればいいからである。

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