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《霞飛び①》第十一回

 このままでは無為無策で終わってしまう…と、不意に思えた左馬介は一時、飛び降り稽古を中断することにして足を止めた。そして、腰に挟んだ手拭いで、(ひたい)の汗を拭き取った。

「…首尾よういかぬようじゃのう。フフフ…、そう急かずともよいわ。今日のところは、これ迄と致し、持参の握り飯を頬張った後、戻るがよかろう。策を(ろう)するは無策と申すぞ、左馬介。未だ至らずじゃな、ワッハッハハハ…」

 左馬介の一連の所作を一笑に付すと、幻妙斎は凍りついて、また洞内の岩肌と同化した。知らぬ筈の握り飯のことまで知っている師の千里眼に左馬介は全くもって恐れ入った。

 左馬介が洞窟を退去したのは、それから暫く後である。道場へ戻る道すがら胸に去来するのは、いつも緩慢な動作の獅子童子が俊敏に身を(こな)した姿であった。自分も何故、あのような身軽さで動けないのか…と、左馬介は巡るのであった。

 道場の門を潜ると、鴨下と長谷川が竹刀を交える音が掛け声とともに左馬介の耳に飛び込んできた。二人の声は珍しく力が入っているように左馬介には思えた。特に、剣の上達が余り芳しくない鴨下の声が真剣で力が入っている風であった。

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