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《霞飛び①》第十回

そして左馬介を窺うと、ひと声、ニャ~と鈍く鳴いた。次の瞬間、獅子童子はヒラリと飛ぶや、左馬介の足元へ一枚の枯れ葉の如く舞い降りた。それは正に、一枚の枯れ葉が舞い落ちるようで、つい最前、幻妙斎が示した技と遜色がないように左馬介には思えた。左馬介は、猫に出来て自分に出来ぬ訳がない…と、強く心に云い聞かせた。獅子童子は、そんな左馬介の心中を知ってか知らずか、また何処かへ姿を消してしまった。左馬介が一瞬、眼を離した隙に、である。だが、猫が何処へ行ったのか…などと、悠長に考えている場合ではない。左馬介は稽古を再開した。まずは幻妙斎が注意を喚起した身体の力を取り去ることである。そうは云っても、飛び降りようとする瞬間に、どうしても身体が硬くなり力が入ってしまう左馬介であった。

 二度、三度と続けたが、結果は(かんば)しいものではなかった。そうなると、次第に心は焦り、益々、身体を硬くしてしまう、といった悪循環に陥ってしまう。左馬介は深呼吸を幾度となくして、心を落ちつかせようと努めた。その後、五度(たび)ほどは飛び降りたが、やはり(おも)うに任せない。全体は既に汗でびっしょりと覆われ、(ひたい)から(したた)り落ちては岩肌を濡らした。

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