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《霞飛び①》第一回

 獅子童子は老いたとはいえ、ここぞ! という時は俊敏に身を(こな)す。太めの体躯で、優に五尺は跳び上がるのだ。これが人ならば、正しく幻妙斎の如く自由自在に跳ね飛んで、その姿を消し去るのだろう。左馬介は洞窟にいた獅子童子の姿を、ふと思い出し、巡っていた。幻妙斎の言を辿れば、どうもその秘技を授けようという意味にも取れる。いや、だが待てよ…。霞飛びの秘技は皆伝を允許された者以外には授けられない…と、いつか一馬が話していたが…。だとすれば、允許が未だの身の自分に授けられる訳がない。左馬介は風呂場の浴槽に浸かりながら、なおも巡っていた。その時、外で声がした。

「どうです? 湯加減は。(ぬる)ければ焚きますが…」

 鴨下の声であった。左馬介は我に帰った。

「い、いや、丁度、いい湯加減です…」

「そうですか…」と小声がして、足音が遠退いた。鴨下は去ったようだった。左馬介が湯を上がると、既に汚れた着物や袴は持ち去られていて、新たなものが脱衣場の片隅に用意されていた。勿論、褌の(さらし)も新たしいものが小まめに畳んで置かれている。長谷川、鴨下、左馬介の三人だから出来る配慮で、客人身分の者達がいた頃には想像すら出来ないことだった。

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