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《教示③》第二十四回

いや、全神経をその一点に集中させれば、足元が覚束(おぼつか)ないから、一割方は、やはり足元にも気を配らねばならんか…と、左馬介は思いつつ箱を持った。そして、しゃがんだ姿勢から立ち上がると、漸く緩慢に歩み始めた。だが、滝壺の水中を歩んだ時とは異なり、両手で持つ箱の重みが諸に腕へ加わると、水か無い分だけ空中では負荷がかかる。傾けないように…と、意識すればするほど、両腕に力が入り、その負荷が余計に大きくなっていった。やがてそれは腕の(しび)れとなって左馬介を襲った。幸いにも、洞窟へ、いつ迄に持参せよ、との幻妙斎の細かな沙汰はない。それが、かろうじて左馬介の心を慰めていた。やがて左馬介は、これ以上、進むのは無理だと判断したのか、しゃがみ込むと山道の上へ静かに箱を置いた。そして、乳酸の溜まった両腕を交互に揉み(さす)った。暫くすると、次第に両腕の、けだるさは消えていった。左馬介は、ふたたび箱を持つと歩き始めた。

 三度ほど箱を地面へ下ろした末、左馬介は漸く幻妙斎が籠る洞窟へと帰り着いた。しかし、ここからが真の正念場なのである。というのも、洞窟の中の足場は山道とは違い、起伏に富んでいる上に安定性もない。しかも、足場は土はなく岩肌だから、滑り易いという問題もあった。

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