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《教示③》第二十三回

要は、遮蔽(しゃへい)物がない外では、急に風が吹けば、出した灯明皿の火など、ひとたまりもなくフッ…っと消え去ることは必定だった。そのことを、紐を解く寸前で左馬介は咄嗟(とっさ)に思ったのである。いや、正確に云うならば、思うという間もない瞬時の機転に近かったのだろう。左馬介の心は、以前にも増して研ぎ澄まされたかのようだった。すんでのところで、咄嗟の機転がものを云い、左馬介は外箱の蓋を開けずに済んだ。そうなると、残る試練は、この外箱を現状のまま幻妙斎の待つ洞窟へ無事、運ぶだけである。底が見えない滝壺とは違い、足元は容易に視界に入るから、意を注ぐとすれば、油断による転びや(つまず)きを回避することである。そうした事態さえ避けられれば、十中(ちゅう)、八、九は首尾よくいきそうに左馬介には思えた。それでも慢心は厳に慎まねばならない。裏を返せば、十中、一、二は下手をする可能性があるのだ。この慢心こそ、幻妙斎が剣を極める道を説く上で、最も忌み嫌う心の有りようの一つであった。洞窟への山道は、いつも左馬介が通り慣れた道だったから、余程のことがない限り躓

(つまず)かないだろろう…とは思えていた。そうなると、箱を両手に持ち、傾かせて箱の中の灯芯を消さぬように意を注ぐことに全神経を集中させればよい。

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