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《教示③》第二十二回

 剣の道は、人を負かす為の鍛錬というより、自分との対決にも似ている。これは柔術とも相容(あいい)れる共通の精神…と、左馬介には思えていた。幻妙斎が左馬介に教示しようとしたのは、まずは、その基本である。基本は技以上に必要なのだ。技が冴えたとて、それを誇れるのは、ほんの一時期に過ぎない。基本が備わっていない我流の剣筋は邪険であり、自ずと瓦解する。そのことを幻妙斎は示そうとしたのだった。基本とは即ち、如何なる場合においても砕けず乱れない心の備えなのである。心に乱れが生じなければ、窮地を脱する咄嗟(とっさ)の判断力も自ずと生じ、更に備えれば、素早い身の(こな)しで相手の隙を突く逆技の刃も容易となるのだ。今の左馬介は、まず箱内に灯る火を消さぬ動揺なき心を(はぐく)む鍛錬、即ち、心の基本を固める修練を積んでいるのだった。が、しかし、その教示の意味を左馬介が全て知るのは、もう少し先のことである。

 幸いにも、左馬介は(つまず)くことなく無事に滝壺を抜け出ることが出来た。そして腰へ括り付けた燭台を地面へ置き、最初にその横へ置いた外箱の紐を外そうと手を触れようとした。だが、左馬介の手の動きは、はたと止まった。よく考えれば、外気がほとんど流れない洞窟や洞穴のような閉ざされた地の利ではないのである。

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