表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
373/612

《教示③》第二十一回

 ここで左馬介の機転の工夫が炸裂した。外箱を逆さにして置き、外箱をゆっくりと両手で上げる。当然、外蓋は裏を向いてそのまま岩盤上にある。一端、持ち上げた外箱を下へ置き、灯明皿の入った内箱を、裏返った外蓋の上へ置く。そして、下へ置いた外箱を持つと、その内箱の載った外蓋の上へ、すっぽりと逆さのまま被せた。 それも、外箱と外蓋は少し、ずらせて隙間を開けておく。こうすれば燃え続ける為の空気は入るから、火は消えない寸法だ。しかも、飛沫(しぶき)や外気の激しい流れ、即ち、滝の瀑水が落下する時に生じる風を(さえぎ)ることにもなる。咄嗟(とっさ)の閃き、これも神仏の加護に他ならない…と、左馬介には思えた。

 風呂敷で外箱の上を覆い、両手に持ちながら左馬介はふたたび滝壺へと浸かっていく。入った時と同じで側面より迂回する道筋を選んだが、今度は入った時とは違い、箱を両手に(たずさ)えているから、(つまず)いたりすれば命取りになる、素人考えならば、消えたとしても滝壺から抜けた時、もう一度、着火して灯しゃいいじゃないか…ということにもなるが、左馬介はそう迄して幻妙斎の教示を受けようとは考えてはいなかった。そうすることで事を成就することは容易(たやす)いが、それでは剣の教示を受ける意味がない、と左馬介は考えたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ