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《教示③》第十六回

ただ、そうであったとしても、敢えて知らない態にしておいた、ということが無くもない。二人の暗黙の協力とでも云えるものだが、しかしその事実があったかも分からない。一つ云えることは、全てが普通の流れで進んでいったということである。

 妙義山の洞窟へと左馬介が着いたのは、折りしも東の空が白み、陽の光が漏れ始めた頃である。この光景は幾度も体験した覚えがあり、左馬介の身には馴染んでいた。

 洞窟へと辿り着き、いつものように洞の中を進む。これも、いつもと同じ馴れた足どりで、別に辺りを意識しているということではない。ただ、背に負う風呂敷包みだけが、いつもと違うといえば違うくらいのことだ。その中には、云わずと知れた二ヶの木箱と紐が入っていた。洞窟の奥では、いつものように幻妙斎が瞑想している。左馬介が入ったことなどは全く無頓着で、微動だにしない。だが、左馬介には、師が既に気づいていることが分かっていた。師を仰ぎ見て静かに頭を下げ、今日の試練への出発を告げる。

「では、これから行って参ります…」

「心乱さずば、自ずと道も開けよう…」

 急に幻妙斎がひと言、発した。無論、不動の姿勢は崩さず、眼を閉じて氷結したままである。

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